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「責任だけで、私を娶ろうとしないで」
好きだとか、メリットがあるとか。
そういう意味で彼はテレーズを娶ろうとしているわけではない。処女を貰う責任を取るから。そのためだけに、テレーズを娶ろうとしている。これでは、自分はどういう感情を抱けばいいのかがわからない。
「それに、ラウルさまだったら、素敵な女性を選び放題です。絶対に浮気する」
最後にぼそっとつぶやいた言葉に、ラウルは「絶対に浮気なんてしない」と力強く言った。
こんなところで、その言葉を信じろというほうが無理だ。
「俺は、ずっとテレーズ嬢が好きだった! 好きな子を娶って、浮気するような最低な男にはならない!」
彼は勢いに任せてテレーズに言葉をぶつけた。好き? 一体、誰を?
「い、意味がわからない……」
先ほどの言葉を繰り返し、テレーズは毛布で顔を覆う。
彼は「好き、好きです。ずっと、前から」と今にも消え入りそうなほどに小さな声で続けた。
「あなたのそのたくましい性格も、あなたの家族想いなところも。あなたの美しい容姿も。全部全部、好きだ。いわば、一目惚れです」
小さな声でラウルが告げる。本当に理解不能だった。
「う、うそ、嘘おっしゃらないで!」
「嘘じゃない!」
テレーズの上に覆いかぶさったラウルが真剣に伝えてくる。しかし、テレーズは信じられずに首を横に振る。
「だ、だって、ラウルさまいつも私に突っかかってこられて」
「そりゃあ、好きな子には構ってほしい」
なんだろうか、それは。
眉を顰めるテレーズに対し、彼は真剣な面持ちを崩さない。
「男というものは、好きな子を虐めたい部分があるんですよ」
こちらとしては、好きだからという理由で虐められるなんてたまったものじゃない。
「ほら、テレーズ嬢。――俺のこと、好きって言って」
甘えたような声で、ラウルが言葉を促す。どうして、そうなるのだろうか。
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