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(えっちしなと出られない? けど、処女をこんなところで捨てるなんて)
近くにあった毛布を手繰り寄せ、顔を隠した。
テレーズの様子を見たラウルは「怖いんですか?」と問いかけてくる。少し迷って、テレーズは言葉にうなずく。
「だ、だって、処女じゃなくなったら……貴族令嬢としての価値が――」
テレーズは女騎士をしながらも、ひそかに玉の輿も夢見ていた。
最近では昔よりは廃れ始めているが、貴族令嬢は純潔ではないとならないという考えは根強い。初夜までは処女を守り切ることが大切だと、テレーズも昔から口うるさく言われてきた。
「――そうですか」
ラウルはテレーズの言葉を聞き、なにを思ったのだろうか。
なにかを考えるように頭を掻く。しばらくして「じゃあ、俺と結婚しましょうか」とのんびりと告げる。
「――はい?」
彼の言葉にテレーズは上ずった声を上げてしまった。
テレーズをよそに、ラウルは「俺が責任を取りますんで」と真剣な面持ちで続けた。
「責任をもって、あなたを娶る」
繰り返された言葉に、テレーズはこれが夢ではないことを理解した。
「ちょ、い、意味が――」
「そのままの意味です。テレーズ嬢、俺と結婚しましょう」
真剣な面持ちのまま、ラウルはプロポーズをしてくる。
少なくとも、プロポーズはこういう場でするものではない。それに、つまり――。
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