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「アッハハハ! 本当だ、ファンじゃなくても聞き飽きたタイトルだわ! 地球人ならみんな知ってるわね!」
「山口さんは?」
「私は、『ブルースへようこそ』(1979)を一生聴いてる。本気でなに言ってるのか分からないから」
「ああ。ネットや本では歌詞が出てるけど、自分で解析するのが醍醐味だよね」
「そうなの。本気でなに言ってるのか分からないから」
「二回言った。あれはぼくたち、サザンを聴き込んだファンでも厳しいからなあ」
「でも、今年(2024)された『ジャンヌ・ダルクによろしく』は度肝を抜かれたわ。ここにきて、王道バンドサウンドだなんて。しかもかなりの名曲!」
「ぼくもヘビロテしてるよ。あれはサザンの代表曲になりそうだね。……ところで」
「どうしたの?」
「今気づいたが、お前、山口さんじゃないな」
山口さんは、羽織っていた黒いマントをばさりと跳ね上げた。
「はーっはっはっは! よくぞ見破った! 俺の名は関ケ原ジャスティン、山口さんの真っ赤な偽物さ! 影武者ってやつだ!」
「影武者とは全然違う気がするけど、なぜそんなことを?」
「君がサザンファンと聞いた山口さんに、山口さんの振りをして、サザンの話をして興味を持たれるように頼まれたのだ!」
「どうりで、いつもの山口さんとは、顔も声も体格も口調も性格も性別も違うと思った」
「クックック、よくそれで山口さんだと誤認できたな! いずれ貴様とはゆっくり語り合いたいものよ!」
「ぼくも、山口さんより、どちらかというとあんたに興味があるよ、ジャスティン」
「フハハハハ、いいだろう。いずれまた機会があったらな! 『IF I EVER HEAR YOU KNOCKING ON MY DOOR(もしもあなたのドア・ノックが聞こえたら)』というわけだ!」
「おしゃれっぽく締めるな!」
その時、教室のドアが開いた。
山口さん(本物)がそこに立っている。
「ご、ごめんダヨォ、家永くん! うち、どうしても家永くんと仲良くなりとォて……でもサザンにはそんなに興味が持てねっもんだからよォ!!」
「いいんだよ山口さん! ところで、……それでも一応、サザンで好きな曲はあるのかな?」
「う、うーん、そうだなァ……有名なやつで最近のしか知らんけどォ……強いて上げるならァ……」
「うんうん! 強いて上げるなら!?」
ぼくとジャスティンは、身を乗り出して耳に手のひらを当てた。
「『しゃアない節』(1994)、『グッバイ・ワルツ』(2012)、『六本木のベンちゃん』(2012)あたりかなア……」
「ズッコケ~!! そ、それ全部桑田佳祐のソロやないかーい! 本当にサザンには疎いんだなア~!?」
終
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