いつの日か

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いつの日か

 マサルとケンは、お祖母ちゃんを真ん中に片手ずつ繋がれて、産まれてからずっと住んでいた家を出ることになった。  マサルは小学校5年生。ケンは3年生。  お父さんとお母さんはマサルとケンが小学校の遠足に行っている間に、上手く言っていない自営の事業を悲観して、車の中で練炭自殺というのをしてしまった。  とにかく、二人ともいなくなっちゃったってことだ。  お祖母ちゃんは、まだ両親の遺体が警察にある間にマサルとケンを自分の住んでいる、埼玉の自宅へ連れて行こうとしている。  両親が移っている写真縦だけをもって、葬儀などもすべて父方のお祖父ちゃんに任せた。  お祖母ちゃんはお母さんの方のお祖母ちゃん。  お母さんの家のお祖父ちゃんは3年前に病気で亡くなっている。  お父さんの方にはお祖父ちゃんしかいないから、子どもが来ても困るし、お父さんと一緒にまだ事業にかかわっていたので、後始末ってのがあるらしい。  最低限必要な洋服をカバンに詰めて、ランドセルには学校の物を全部詰めて、お祖母ちゃんと一緒にこれから電車で1時間ほどのお祖母ちゃんの家へ行く。  4人向かい合わせの席の電車の中でお祖母ちゃんがウトウトしている間にマサルとケンは話をした。 マサル「なぁ、俺達、お祖母ちゃんとずっと一緒にいられるのかな。」 ケン「どうかな?保険金。ってのが降りてもお父さんの仕事がうまく言ってなかったからそっちで使うって、お祖父ちゃん言ってたし。」 マサル「俺達、まだ小学校なのに、お祖母ちゃんの所にそんなにお金あるかな?」 ケン「でもさ、あの家はさ、きっと売られちゃうかもね。」 マサル「あぁ。多分。俺達もう、お祖母ちゃんとこしか行くとこないんだよな。」 ケン「ねぇ、兄ちゃん。でもさ、あの家の場所は覚えておこうよ。」 マサル「なんで?もう人の物になっちゃうんだよ?」 ケン「大人になった時、あの家の場所に一緒に行ってみたいんだよ。  だって、お父さんが一生懸命お金貯めて買った家だったのに。」 マサル「あぁ・・そうだな。俺達が大人になった時にあの場所がどうなっているのか見に行ってみたいな。」 ケン「うん。それでさ、その時見て、もうあそこは自分の家じゃないって思えたら、自分の家とか建てる気にもなるかもじゃん?」 マサル「ケンは気が早いな。俺たちまだ小学生だぜ?」 ケン「だってさ・・・なんだか、居場所を追い出されるって、お腹にぽっかり穴が開いたみたいな気持ちなんだよ。」 マサル「あぁ、それは何となく分かるかも。うん。きっとそれが何となくモヤモヤしてる原因かも。」 ケン「じゃ、約束な。大人・・・俺が18歳になったら一緒にあの家の場所を見に行こう。」  お祖母ちゃんは二人の会話を聞いて、涙をこぼさないようにずっと我慢していた。  寝ているふりをしていたけど、話は全部聞えてしまっていた。  お祖母ちゃんは、ようやく起きたふりをして、欠伸をして、涙を拭いた。 「さぁ、もうつくわよ。荷物持ってね。」    二人は何度もお母さんと一緒に行っていた、お祖母ちゃんの家まで重い荷物を持って、歩いて行った。
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