116人が本棚に入れています
本棚に追加
「よくも婚約破棄されてくれたな、能なしの『亡霊憑き』め。穀潰しは出て行け!」
「はい、お世話になりました!」
私リリーベル・シブレットは元気に頭を下げて、父の気が変わらないうちに手荷物を背負って玄関を出る。
庭を駆け抜けて外につけた幌馬車に飛び乗ると、御者のトムさんがあちゃあ、と帽子の上から頭をかかえた。
「やっぱり追い出されちまいましたか、お嬢様!」
「ええ、ばっちりよ! トムおじさま、早くだして!」
「言われなくとも」
街へと運ぶ荷物がいっぱいの幌馬車の中、私はバッグをぎゅっと抱えた。
私はやっと自由になった。
気に入らなければ殴ってくる父とも私を義弟妹のスケープゴートにして助けてくれない継母ともお別れだ。
私は前世の記憶を思い出した5歳のとき――5年前から、ずっと実家を追放される為に我慢してきたのだ。
父に殴られ、固いベッドの端で頭を打ったとき、5歳の私は思い出した。
自分が10年前に世界を救って死んだ『大自在の魔女』レイラ・アンドヴァリの生まれ変わりだと。
最初のコメントを投稿しよう!