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四月八日(1)
四月八日。
神山大愛は、この日を決して忘れない。
例え三月三日を忘れようとも七月七日を忘れようと十二月二十五日を忘れようとこの日を忘れることは決してない。
この日……神山大愛は三つの大切なモノを失った。
一つは中学の入学式。
一つは夢。
そして最後の一つは……。
大愛が目を覚ますとそこは病室だった。
面白みのない白い天井、眼下に見える皺のよったシーツ、ツンッと鼻につく薬品の臭い、耳障りな機械の音に喧しいくらい入ってくる大量の酸素。
視線を動かすと涙を流す両親の姿が飛び込んでた。
大愛が目を覚ましたことに気づいて声を咽びあげ、慌ててナースコールを押して誰かを呼ぶ。
誰かって……医師が看護師に決まってるじゃんって今になったら思うがその時の大愛はそんなこと考えることも出来なかった。
それくらい全身が痛かった。
特に両腕がずっと痛い。
肩から指先にかけて千切れるように痛い。
重くて動かすことも出来ない。
こんなに両腕が痛いのは初めてだ。
ピアノの練習でどれだけ酷使してもこんなことは一度もなかった。
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