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山道を潜り抜けて小高い丘に辿り着き、車を停めた彼は初めて助手席の私を見た。
「ちょっと出てみない?」
私は今夜、人知れずここに埋められてしまうのかもしれない。
私の今までの悪行が、実はこの人の大切な誰かを傷つけ……その裁きを私に下そうとしているのなら仕方ない。
だけど私は彼のダウンで包まれた。
ダウンに袖を通しながら見てみると、彼は小さなコーヒセットで豆を挽き始め、私はその手際の良さに目を奪われてしまう。
「見せたいものは僕じゃない。もっと上だよ!」
言われて見上げると満天の星!
「星降る空の下じゃ缶コーヒーでも十分美味しいんだろうけど、ちょっとだけカッコつけさせて」
笑顔の彼からカップを受け取ると芳ばしい香りに全身が包まれる。
ふと、『幸せの鍵』が頭の中をよぎり身震いして否定する。
「寒い?」と聞かれて
私は全然大丈夫なフリで空を見上げる。
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