レン

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 私はスマホ片手になるべく彼らの顔を写さぬよう配慮した。こんな読めない言葉を書いた彼らにも家族はいる。頑張って接客中の女性店員に私は再度許可を得て撮影したのだ。 『読めないなら書くものじゃない。せっかくのランチが楽しくなくなるだろう?』  私たちの話を聞き耳たてて聞いていたお客たちから拍手がまばらにわいてくる。 『私だってこんなことで時間を無駄にしたくはないよ』  彼らにお灸を据えながら、聞こえてきたのは正直なお腹の虫だった。 『ごめんなさい』  複数の声が重なりあう。女性店員はホッと安堵し私に頭を下げて、彼らを案内した。  席に戻ると少し冷えたチーズハンバーグを食べはじめる。なんの運命なのか、彼らと近くの席になってしまったのはいうまでもない。
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