花嫁のすがた

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花嫁のすがた

目を落とすと大きく開いた胸ぐりから自分の谷間が見える。 そしてそこに掛かる艶やかな光沢を放つ絹の様な柔らかな髪は、 (たまき)が17歳の時にバッサリと切った……切ない抗いの痛みだ。 結局、環は……この家の歴史の一部を成す為の()()を迎える… いけない! 今だけは……今日だけは…… その事は忘れなければ! 私達が望んだ 一夜だけの結婚の日なのだから…… 「あずさお嬢様、どこか苦しいところはありますか?」 ばあや様はあの時と同じ様に私にドレスを着せて下さる。 「いいえ、ばあや様! とても体に馴染んでいます。 まるで……ドレスが織り成す世界の住人になったかのように……でも それは私の思い込みで、15歳の誕生日の時の様にちぐはぐなのではと……だってあの時とは比べ物にならないくらいに()()()()()()()()()()な私なのに……こうして我が身に胸の谷間を見たり、ばあや様が誂えてくれた……()()()()()()()()()()ティアラを付けたりすると……いつもの自分ではないのだろうなと思ってしまいます」 「とても可愛らしく、お綺麗であられますよ。さあ!鏡をご覧ください!」 ばあや様は私を姿見の前に導いて、その上に掛かっていたビロードのクロスをクルクルと巻き上げた。 ああ、 鏡に写る私は…… 私は少なくとも ()()()姿()では ナルシストではない。 だけど…… 「ばあや様!! これは魔法?!! とてもとても素敵です! お化粧もドレスもすべて!!……私、思わず……鏡に写る自分に恋するところでした。でも……」 「はい。環お嬢様のお支度はもうできていますから……お呼びしてもよろしいですか?」 「お願いします」 どういうことだろう…… 鏡の中の私は 明らかに恥じらいの笑みを浮かべている。 私は……少なくとも今までの私は……自分の感情の赴くままに自分の姿、立ち振る舞い、行動を表出させて来たつもりだったのに…… 今は逆に心が……姿によって規制されている。 では、私が環を愛おしいと思う感情の根っこはいったいどこにあるのだろう…… その時、カチリ!とドアが開いて “この世界の住人”がやってきた。
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