─────────三か月後
「それじゃ、元気でね」
空港の検査場前で私と母が諒を見送っていた。
今はまだ諒が居なくなるって言う実感が湧いていなくて、正直悲しいとか辛いとかそんな感情もいまだ湧かない。
「諒くん…、気が変わったらいつでも帰ってきてね」
「……うん。父さんによろしく」
嘘吐き、帰ってくる気なんてないくせに。
こんな時まで義父は仕事を優先した。
もう会えなくなるなんて思っていないから。
昨夜簡単な挨拶だけ済ませてそれっきり。正直かなり腹立たしい。
「花、なんて顔してんの」
笑いながら私の頬をぎゅっと挟んでいる。
こんな状態で笑ってお見送りなんてできない。
「分かってたし、気にしなくて良いよ。むしろ来られたらびっくりする」
「…会いに行くから」
「うん、待ってる。それじゃ、本当に行かないと。またね」
またねなんて最後まで帰ってこない事は言わないで、検査場の中へと歩いて行った。
母もきっとわかっていたんだと思う。
言葉をどう掛けようか悩んでいたような、そんな表情をしていたから。
「何か、もっと他にしてあげられたことあったんじゃないかなって。昨日もぎりぎりまで来るようには言ったんだけどね。どうしても仕事が忙しいみたい」
「普段から仕事を優先する癖にこのたった数時間も諒を優先できないの」
「そうね」
私が怒っている事に宥める言葉も出ないのか母は検査場の先をぼーっと眺めて何かを考えていた。
元々好きでも嫌いでも無かった義父だけど、今は嫌いだ。
どうせそういう人に限って、家庭の為とか言うのも目に見えている。
「帰ろう」
そう言って先に背を向けて歩き出す。
これ以上ここに留まっても義父へのいら立ちが募るだけ。
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