13人が本棚に入れています
本棚に追加
約束の場所
「知佳……俺と結婚してくれ」
「……うれしい……でも良平……ちょっとだけ待って」
「それは……ダメって事なのか……」
「そうじゃないの……でも、明日、連絡するから、ちょっとだけまって」
「……わかった……」
俺のプロポーズは、保留となった。
次の日、俺はベッドに寝転がりながら、スマホを眺める。
知佳とは、小学生時代からの知り合いだ。だが、幼馴染というほどのものではない。
中学は別々の学校だったのだが、塾で同じクラスとなり、やっと友達として話すようになった。
その後は、一緒のオンラインゲームをする様になり、益々仲が深まる。
その頃からだろうか。俺が彼女に興味を持ち始めたのは……。
俺は高校に入ると、彼女に告白をした。そして、高校、大学と彼女と付き合い、今に至る。
就職をし、仕事も軌道に乗ってきた。だが、ここに来てストップが掛かった。
何がいけなかったのか、彼女にとって、俺の存在とはいったい何だったのだろうか。
一世一代のプロポーズが不発に終わった事を俺は悔いていた。
ブブブ。
俺のスマホが揺れる。
どうやら、知佳からのメッセージが届いたらしい。
直接は言いにくいから、きっとメッセージで断りの連絡を入れて来たのだろう。
俺は、昨日の彼女の物言いを、そう解釈していた。
……だが、彼女のメッセージは、俺が考えているそれとは違った。
『約束の場所で待っています。期限は明日の午前10時まで。』
……なっ、これはいったい……。
そもそも、約束の場所ってどこだ?
俺はすぐに折り返しのメッセージを送る。
だが、既読が付かない。
……まっそうだろうな。自分で気づけって事なんだろうな。
だが、その昔、俺は、彼女と何か約束をしたのか?
思い出せ。彼女はそこで待っている。
俺は推理探偵になった気分で、ベッドから立ち上がった。
最初のコメントを投稿しよう!