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疲れているとはいえ、二人の打ち合いは壮絶なものだった。離れて見ている妲己はただ唖然とするだけだ。
妲己 「なんでこんな動きができるの。二人ともボロボロじゃない」
二人の武器がぶつかり合うたびに部屋が揺れる。
凶牙 「でや!」
遠呂智 「むん!」
二人は本能で動いていた。まるでこの戦いを楽しむかの如く。互いに一発でも当たれば致命傷となる一撃ばかりだ。
遠呂智 「終わりだ…」
遠呂智の一撃が凶牙に当たる。凶牙の腹部から血がでる。
凶牙 「ぐっ」
一瞬凶牙の動きが鈍る。その隙を遠呂智は見逃さない。遠呂智はしゃがみ、手のひらを地面に着けた。
遠呂智 「これが…魔王の力だ」
遠呂智の手を中心に黒い円が出て、凶牙を包む。
凶牙 「ぐあぁぁ」
凶牙はもう限界だった。遠呂智の魔術を打ち消す力はもはや残っていない。
凶牙 「私もここまででしょうかね…
凶牙は自分の負けと身の消滅を悟った。
遠呂智 「滅せよ、凶牙」
遠呂智は力を込めた。術の威力が上がる。すると凶牙の体が少しずつ消滅していく。
凶牙 「…ここまで…ですか。遠呂智様を越えることは…出来ませんでしたね」
遠呂智 「凶牙よ、なかなか楽しめたぞ」
凶牙 「フフ、そうですか。しかし貴方はもう終わりです。その体では猛者どもには勝てない。」
凶牙は微笑む。そして凶牙は完全に消滅した。
遠呂智 「凶牙よ…さらばだ」
妲己 「やっと消えた。全くしぶといんだから」
遠呂智 「…ふん」
遠呂智は部屋を出た。妲己も続いて部屋を出た。
凶牙の戦いは終わった。遠呂智によって現れ、遠呂智によって消された。彼の働きによって反乱軍らは古志城まで進軍することができた。遠呂智は古志城の戦いで反乱軍に敗れ戦死した。この戦いの時の遠呂智は全力を出せなかった。それは凶牙との戦いの後すぐに反乱軍が押し寄せたからだ。凶牙との一戦で力をほとんど使っていて、遠呂智自身の損害も回復しないまま反乱軍らと戦った。結果として凶牙が遠呂智を追い詰めたという形になったのだ。
こうして遠呂智軍は敗れ壊滅した。しばしの間だが世には平和が訪れた。
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