成り上がり男爵令嬢は今日もカレンダーどおりに

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 エバは自室でぼんやりと考えていた。  二人から婚約を打診されていた。  一人は侯爵家の三男。金髪の麗しいイケメン。  もう一人は子爵家の長男。イケメンではないが真面目そうだ。  両親はもちろん侯爵家の三男を()してくる。 「侯爵家だぞ!」  しかし女友達は皆そろって侯爵家の三男はやめておけと言う。 「イケメンが余ってるなんておかしい」 「侯爵家から男爵家のエバに婚約打診? その男に何か問題あるんじゃないの」 「身分が下だからってモラハラぶちかましてくるかも」  女友達の言う通りだと思った。  それで子爵家の長男の方にしようかと思った。  しかし今日、エバは王妃のサロンで侯爵家の三男に会ったのだった。  エバはサロンの裏方(うらかた)を一手に引き受け忙しく立ち回っていた。  そんなエバをちらりと見てから、王妃は侯爵家の三男に何かそっと耳打ちした。  彼はエバの方を振り返り、柔らかい眼差(まなざ)しを向けた。  エバは彼の眼差(まなざ)しの理由が分からなかった。  自分は商家上がりの男爵家の娘。今だって王妃の侍女として働いている。どう考えても侯爵家と釣り合わない。  しかし彼は、エバが出席者にお茶を出して回っているときに、わざとエバの手首をそっと(つか)んだのだった。  エバは驚いて手を引っ込めようとしたが、彼は離さなかった。それから手首から手の(こう)、そして指へと手を(すべ)らせた。彼の指がエバの薬指を軽く(もてあそ)び、そして彼は微笑(ほほえ)んだ。  エバはどんな誘惑かと思った。遊び人じゃないか!  この人はない!  しかしサロン終わりに、王妃がエバにこそっと言ったのだ。 「私は彼を()すわよ」  そう、侯爵家の三男との縁談を持ちかけたのは王妃だった。 「あなたは腕一本でここまでのし上がって来たじゃない。彼は()()()()()()()()と言ったのよ」  そんな今日の出来事(できごと)を思い出しながら、エバは自室のカレンダーを(なが)めた。  びっしりと王宮の仕事が書きこんである。中には難しい案件も。そして今日もカレンダーどおりに仕事をしたのだ。  これはエバの勲章(くんしょう)。  王妃の信頼を勝ち得た(あかし)。  そして思った。私がそういう女だと知っているなら、どういうつもりかちゃんと聞けば彼も答えてくれるかもしれない。思い込みで(こば)まずに。  あの誘惑の意味も聞く――?  そう思った瞬間、今日()れられた指が急にかっと熱くなった。胸がドキドキする。  ま、前向きに考えてみてもいいのかも……?  数日後、真面目そうな子爵家の長男が実は(ひど)い乱暴者だという(うわさ)を伝え聞いた。  見た目で判断しちゃダメね、とエバは(つぶや)いた。 (終わり)

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