0人が本棚に入れています
本棚に追加
上司の奢りで、いわゆる『回らない寿司屋』に行った。
今日は何でも好きなものを頼んでいいと言われたが、それが建前なのは判るので、ほどほど値段の寿司を注文し続けた。
なのに一緒に来た後輩は、値段など気にせず好きな寿司を食いまくる。
さすがに上司の懐具合が不憫だろうと、上司がトイレに立ったタイミングで忠告したら、意外な答えが返った。
「○○部長、今月内に亡くなります。当然、派閥に属する人達も以降は冷遇。俺や先輩もしばらくは社内で身の置き場がなくなるので、存命中に多少なりともいい思いをしておいた方がいいですよ」
こいつはいったい何を言っているんだろう。
その時は本気でそう思ったが、半月後、上司は交通事故に巻き込まれ、帰らぬ人となった。
後輩が言ったとおり、派閥に組み込まれていた人間は冷遇され、俺はしばらく所在のない思いをしていたが、やがて、別の上司が気にかけてくれるようになり、今ではその人の元で懸命に仕事をしている。
ちなみにあの後輩は、上司の死後、程なく主流派閥のお偉いさんに引き立てられ、今は出世コースを歩いている。
あの時の発言から察するに、あいつには予知能力のようなものがあるのかもしれない。
とりたててそれを羨ましいとは思わないし、今後は同じ会社にいても、ほぼ関わることはないだろうから、あいつのことは気にかけず、俺は俺の道を進もう。
予言…完
最初のコメントを投稿しよう!