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「賊だ! 誰か!」
生き残った男の一人が思いついて呼子の笛を鳴らす。
ピー――――ッ! ピー――――ッ!
イヴェットが懸命に走るその足元を、白いフェレットが駆け抜け先導する。
本来は人馬が行きかうはずの一階部分は、呼子の笛を聞きつけて、対岸からも騎士が駆けつけてくるのが見えた。フェレットは上層部分に至る梯子段をシュルシュルと登っていくので、イヴェットも続く。
軽快に駆けあがるフェレットを追いかけ、イヴェットも何とか登り切る。すぐにエンツォも梯子を駆け上がると、後ろから追ってきた騎士ごと、梯子を外す。
「うわあああああ!」
叫びながら落ちていく騎士を無視して、エンツォが叫ぶ。
「イヴェット、走れ!」
水道橋の上は手すりも何もなく、長年の風雨にさらされて石はすり減り、雨に濡れて滑りやすくなっていた。
下を見たイヴェットはその高さに足がすくむ。
――下をみたらダメ! 走れなくなっちゃう!
追いついたエンツォが、イヴェットの手を取る。
「インノケンティウス七世の後をついていくんだ」
フェレットが示す安全なルートをついて走っていく。
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