点火

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点火

「あっ、あの!これ、落としました…よ」 「…あ?あぁ、どーも………中、見た?」 「いえ、見てません」 「なら良かった。んじゃ」 それが分かれば用済みだと言いたげな口ぶりで彼はアパートの駐車場から去っていく。 フラフラと左右に揺れ歩くにつれて、アッシュグレーのパーマが気ままに靡いている。 まるで自ら道を切り拓いているかのような足取りと背中に、レールの上で生きることしか出来なかった私は初めて会ったにも関わらず憧れを抱いた。 「…あのっ!!」 今、私を止めるものは何もない。 道を踏み外すのなら、ここが好機(チャンス)だ。 「中を見てしまったら、どうなるんですか!?」
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