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春。暖かく、過ごしやすい季節になってきている。神社の木にも桜が色付き始めていた。
平和的な光景だが、その神社の本殿内部では大声が響いていた。
「おらぁ!酒!酒を持ってこーい!」
年端もいかない少女が、酒の空き瓶を蹴り倒してそう叫んだ。周りには既に幾本も瓶が転がっている。
「もうないです。全部飲み尽くしたじゃないですか」
そして盆に瓶を乗せ、呆れた眼差しを向ける俺。
俺の言葉を聞いた少女は、俺に飛びついて胸倉を掴んできた。
「何ッ全部!?一体どこの誰だ殺してやるッ」
「いや貴方です」
「……え、儂?」
うん、と頷くと、俺の胸倉から手を離した。そしてまたさっきの場所へ戻っていく。
「それは……誠か?」
「そもそもここに来る妖でお酒好むの貴方だけですし、周りの空き瓶は全て貴方が飲み尽くしたものですよ」
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