縁を結ぶ桜

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縁を結ぶ桜

桜新町の駅を出て少し歩くと神明鳥居が見えてくる。 「ここは古式神道の神社なんだ」 「古式神道?」 「簡単に言うと神道は仏教やキリスト教など様々な宗教が混ざっているんだ。それに対して古式神道は仏教などが伝来する以前からの信仰とうことで、簡単に言うと他の宗教の影響があるのが神道、無いのが古神道でその本来の姿の神道を目的としているため古式神道ということらしい。火渡りや釜鳴りの神事もおこなわれているんだって。あと、関東大震災や戦災から免れているので災難除けとしても知られているんだ」 一礼をして鳥居をくぐると気持ちがスッと涼やかになる。 「ここは二礼四拍手一礼で少しマナーが違うから気をつけて」 「聞いておいてよかった」 聞いたとおりのマナーに従って本殿でお参りをしたあと御朱印を頂く為に社務所に向う。 桜をモチーフとした美しい御朱印があり、コラボ御朱印の他にも夜をイメージした御朱印も拝受した。 社務所近くの椅子に座ると目の前にはピンクのリボンが無数につけられた木があり、今の時期は花は咲いてないが桜の木のように見える。 そのピンクのリボンにはそれぞれ文字が書かれていた。 「縁結びの木と言われていて縁結びの花帯に願い事を書いて結ぶと願いが叶うんだそうだ。ここは春になると桜が咲いてとても美しい所だよ」 「素敵なお願いの仕方だね」 みんなが書いたお願いごとを読んでしまうのは悪い気がしておみくじが置いてある所を見ると、可愛らしい千代紙で作られた三角の風船のような形のものが枝からいくつも垂れているのをみつけた。 「しだれ桜みくじ?可愛い」 「おみくじ引こうか」 二人で一つづつ選んで紐を引っ張ると中から小さな鈴が出てきた。 そしておみくじはふたりとも“吉”と書いてある。 「一番安定した運気って事だよ。これから二人でゆっくりと大吉にしていけばいい」 「素敵な考えだね。花帯にお願い事をしていい?」 花帯をいただいて元さんに見えないように願いを書いて縁結びの木に結んだ。 「そういえばここは伊弉諾尊と伊弉冉尊の夫婦の神を祀っていることから縁結びの御利益があるんだ」 縁結びという言葉で元さんと初めて出かけた時に行った神社を思い出した。 「そういえば、大国主の話をしたあの神社」 「ああ、松原駅の」 「あの場所から始まったからお礼を言いに行かないと。あと、大国主を浮気者といったこともあやまらないと」 「はははは、確かに」 「ここから近いし、今から行かない?」 「いいよ」 「桜の季節にまた来たいし、池上の桜も見たい」 「俺と一緒に行こう。来年も再来年もずっと」 「はい」 二人並んで歩いていると私の右手が元さんの左手に当たり、自然と手をつないだ。 ずっと二人で歩いて行けますように。 振り向くと縁結びの木につけた花帯が揺れたように見えた。

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