追憶の冥界

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 マグマがふつふつと音をたてている。目の前に並ぶ人々は暑さから素っ裸だ。この暑さに耐えられる者はこの冥界の住人くらいのものだろう。これからこの人々の命運を握る閻魔は、何度も人々の来歴書を読み、サインするのにくたびれて、すっかり腱鞘炎になっている右腕をもう一方の手で強めに揉んだ。 「それにしても、最近、死人が多いな。あれか? どいつもこいつも口にするコロナとかいうやつか?」 「わかりませぬ。コロナ患者でない死人もおりますゆえ、極度のストレスが何らかの関与をしているのかもしれませぬ」  側近の小野篁(おののたかむら)は雑談に付き合いながら、新たな死人たちの来歴書を持ってきた。ゆうに300ページもありそうなそれに、閻魔は深々とため息をついた。 「あのな、篁。おれにも疲れというものがあるんだぞ」 「まぁまぁ、閻魔大王さま。少し面白い案件がありますので、そちらでも挟んでみられてはいかがですか」 「面白い案件?」  興味をもった閻魔はさっきまで受け取るのも億劫だった来歴書に手を差しだした。

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