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そう吐き捨てた理玖は、振り返ることなくその場を去っていった。
「…さて」
「…!」
そう言ってこちらに体を向けたキキさんと瞳を交わらせる。
あの日以来、二人きりになるのはこれが初めて。
何を話せばいいのだろう。
何から、話してくれるんだろう。
再び関わることを許容してくれた雰囲気は何となく感じている。それは、真っ直ぐに見つめてくれる瞳からも、彼の纏う穏やかさからも、ひしひしと伝わってきた。
「紫乃ちゃん、強くなったんだね」
「……っ」
離れていた時間に何をしていたのかなんて、きっとわからないはずなのに。
それなのに、今日の一幕をみてこれまでの私の苦悩も決意も全て見てくれた気がして、また涙が溢れてきた。
今なら、言えるのだろうか。
言えずにいたこの気持ちのことを。
「…ずっと、言いたかったことがあったんだ」
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