追憶の旅人

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 「……何をって、残り時間は僅かだから……」  「……僅かだからって、これしか思い浮かばないの?私に命を吹き込んだと言う事は……」  「……そうだ。そうだった……」  「ここにあるわよ」  由紀がスクラップブックと筆ペンを渡した。  『ズダーン……』  『ガタガタ……』  マンションがグラグラ大きく揺れる。  「慌てないで……」  「……分かった」  龍二はスクラップブックを数枚めくって、丸い和紙を出した。  「初めて挑戦するが、成功するかどうか……」  「……何回も試す時間は、もう……無いわね」  「……そうだな」  丸い和紙に筆ペンで、数字を書き込んでいる龍二の手が震えている。  龍二は書斎の方をチラッと見た。  壁が崩れ炎が噴き出している。  「……2回試す時間は、なさそうね」  由紀が微笑みながら呟いた。  「……そうだな」  龍二の手の震えが止まっていた。  「私が30秒だけ時間稼ぎするわ」  由紀が両手を絡み付くように、バラバラに円運動させながら右手を垂直に突き出した。  すると白い光のエネルギーが2人を取り囲むように、渦を巻きながら床から沸き出す。  『ゴオー』  炎が台所をなめ尽くすように襲ってきた。
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