拾壱

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拾壱

「しばらくは捜査だ調査だと騒がしくなるけど」 「大丈夫です。でも本当に観音像の呪いだったんですか?」 「涙の理由は何を信じるかによるよ。ただ、四家の死は流行り病だったと僕は思う。どうであれ澤教授が答えを出すさ」  村のことは澤に任せ、天津は絢萌の家を訪れていた。 「お爺ちゃん。天津さんが見つけてくれたよ」  瞳を閉じたまま横たわる老人に絢萌は語りかけた。 「お爺さんは、いつから寝たきりに?」 「もう半年ほどです。お茶入れますね」  絢萌と入れ替わるように老人の枕元に座った天津は、その顔を覗き込んで息を飲んだ。そして静かに挨拶をした。 「おにぎり、ご馳走さまでした。おかげで無事たどり着きました」  天津の言葉に老人が応えることはなかった。ただ、その目元に涙が浮かんでいるように見えた。 「お茶どうぞ」 「絢萌ちゃん。轟家の言い伝えって……いや。頂くよ」  (へき)とはいえ、本当は木乃伊(ミイラ)になった少女は愛人だった先祖の子供だったのじゃないか。その言葉はお茶で飲み込んだ天津だった。 〈金色村伝説〉

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