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ポツポツと雨が降っているのに、空は朝焼けで美しく見える日。
「兄ちゃんたち、よろしゅうな」
高架下で暮らすホームレスのおっちゃんが黄ばんだ歯を見せて悲しげに微笑んでいた。
「おっちゃん、ここに住んでた人の遺品はどないするか、わかる?」
兄はこてこての関西弁で、僕らが片付ける先の方に視線を向けて言う。そこには、段ボールと青いブルーシーツがかけられている小さな住まいがある。
同じような作りの小さな住まいが周囲を見渡せば複数あり、こちらに視線を向けるホームレスのおっちゃんたちがちらちらと僕らの様子を伺う姿が見え隠れしている。
「どないするもなにも言うてへん。酒で酔ぉたとき本音を言うてた気ぃするけど・・・」
僕らを呼んだホームレスのおっちゃんは坂木と名乗って、ようやく僕らは遅めの自己紹介をはじめた。
「その本音が知りたい!!ワイは有田洋太。ほんで」
兄がチラリとこちらに視線と親指を向けながら、はよ紹介せんかとばかりに急かす。
「僕は中川慧です。本日は、ご利用ありがとうございます」
僕は兄の頭の後ろに手をやり頭を下げさせると、目をパチパチしながら坂木さんが聞いてきた。
「兄弟ちゃうんか?」
「坂木のおっちゃん、ワイラの話はあとにして、本音を教えて?」
兄の言う通り、僕らの身の上話よりもお仕事をしなければいけない。
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