予言の続き

1/1
前へ
/1ページ
次へ
 小学校のとき、コックリさんがはやった事があった。私も、放課後友人達とやってみたことがある。友人の名前は、ナツミとアキコとしておこう。  その時の事は、今もよく覚えている。  秋の西日が、教室に射し込み、黒板や並んだ机を照らし出していた。  遠くから聞こえる合唱部の発声練習がなんだが呪文めいて聞こえてくる。  そんな中、私達は向かい合わせにした机を三人で囲んだ。もちろん、真ん中に鳥居とYES、NO、それに五十音を書いた紙を置いて。  質問は、『何とか君とナツミは両想いになれますか』、とか『次のテストで良い点がとれますか』とか、小学生女児が好みそうなものだったような気がする。  噂に聞くとおり、十円玉は自然に動いて行った。  しかし、その答えはというと、例えば『ひじくえ』とか『うういお』とか言った、意味不明な文字を示すだけだった。  だから、私達も段々つまらなくなってきて、そろそろやめようか、ということになった。 「ねえ、最後にこれだけいい?」  あまり期待はしないけど、といった感じでアキコが言った。 「私は、将来どうなりますか?」  彼女がそう質問すると、、すす、すす、と十円玉が紙の上を滑り始めた。 『い』『ぬ』 「犬ぅ?」  呆れと笑いがまざった三人の声が重なった。 「あははは!」  アキコの笑い声が響いた。 「人間が将来犬になるなんて。あるわけないじゃない!」  私も、笑いをこらえながら言った。 「なんかの間違いだよね。こっくりさんこっくりさん、私は将来どうなりますか?」  十円玉は、急に激しく滑り始めた。  『い』『ぬ』『い』『ぬ』『い』『ぬ』 「ああ、もうやめよう、やめよう! コックリさん、お帰りください!」  焦ったようにアキコは言った。  よくある怖い話なら、ここで『コックリさんがなかなか帰ってくれない』となるけれど、あっさりと十円玉ピタリと止まった。そしてYESに動いたきり、動かなくなった。  それから、三人は小学校を卒業したが、それでもSNSやメッセージアプリなどで繋がっていた。  そして、成人式も過ぎた後、久しぶりに会おうということになった。  レストランで顔を合わせ、近況報告が始まった。  私は小さな不動産会社で、ナツミは物流系で働き始めた。 「それにしても、驚いたよねえ。まさかアキコがドッグトリマーになるなんてね」  私は言った。 「まあ、子供のころから犬が好きだったからね」 「そういえばさあ」  ふと、ドリアをつつく手をとめてナツミが言った。 「昔、コックリさんに『将来アキコは犬』ってでたことがあったよね。あれって、『ドッグトリマーになる』って言いたかったのかな」  そういえばそんな事があったなあ、と思いだし、ふふっと笑いをこぼした。 「ええ? じゃあなんで普通に『ドッグトリマー』って言わなかったの?」  ナツミは再びスプーンでドリアをすくい始めた。 「そりゃあ、そんな横文字、分からなかったんでしょ。日本の神様だから」 「ええ? 何それ。じゃあ、本当は『犬の理髪師』とでも言いたかったの?」  その話はそれで終わった。  それにしても、『犬』と予言が出て、犬に関わる職業に就くなんてとは偶然とは思えない。 まさか、本当にコックリさんの予言があたったのだろうか? そんなことがあるのだろうか?    それからしばらくして、アキコが山で行方不明になった。数日後、彼女の死体は登山道の下で見つかった。滑落して、やぶの中で力尽きたのだろうとの事だった。そして、アキコの死体は野犬に喰い散らかされていたという。  コックリさんは『犬』の後になんと言おうとしたのだろう。  やっぱり『犬に食われる』だろうか。  ひょっとしたら『犬になる』と言いたかったのだろうか。食べられたなら、栄養として犬の一部、つまり犬になったと言えるだろう。  でも、『犬に殺される』じゃなければいいと思っている。だって、そうだとしたら、アキコは生きたまま食われたという意味になるから。

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加
広告非表示!エブリスタEXはこちら>>