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見事、父の仇討ちを果たした頼重は日野家に凱旋した。
頼重の仇討ちの物語は尾ひれが着いて町中に知れ渡った。
「大儀であった」と褒めるお奉行様の言葉は、深く頭を下げたままの頼重の心には響かなかった。
頼重は日野家を継ぐ事を許され、日野家は与力の職に残った。
頼家の最後を知ったお奉行様は頼家の名誉を回復させ、頼家のためにと日野家の傍に小さな地蔵堂が用意された。《日野地蔵》《仇討ち地蔵》と呼ばれる地蔵は日野家の名誉回復に一役買った。
安浄の首は晒し首になった後、野木の本家も引取を拒否したため、その行く末を知るものはない。
日野家の菩提寺の隅に、《安浄》と刻まれた小さな塚が存在することは寺で隠れ鬼をしてた子供しか知らない。
そして、彼岸になると塚を訪れる十手を腰に挿したお侍様の存在も、そのお侍様が坊主よりも上手に経を読むことも、全部全部、子供の戯言と片付けられてしまうのだろう…
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