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無理無理
セレナは最近朝、お布団から出られない。
何故って。今は冬だから。
別に部屋がすごく寒いわけでもないのに、何となく布団から出たくないのはなんでだろう?
それは、多分冬の朝だから。
部屋はそんなに寒くいけど、なんとなく寒く感じる。
多分気温的には1℃とか、2℃とか低いだけ。
だって、ママが朝、暖房入れてくれているもの。
もしかしたら、暖房のせいで眠くて起きられないのかもしれない。
いやいや、入れてなかったらもっと寒くて、もっとお布団から出たくない。
ベッドの中で起きてから10分ほどの間に、色々と考えてようやく起きだす。
朝食はすでに机の上に用意されている。
「毎朝毎朝。いいかげんにしなさいよ。」
ママは朝から怒っている。
だってさ、ママ。仕方ないよ。
本当はね、寒いから。とか、暖房のせい。とかじゃやないの。
冬の朝にはきっと眠りの精がいるんだよ。
お部屋いっぱいにホワホワしたなにかをばらまいて、それは軽いけど、お布団から出られない位には重いんだよ。
中学生にもなって、そんなことを言ったら、雷が落ちるから言わないけど。
でも、セレナには見えるのだ。
朝のカーテンを開ける前の部屋の中にはなにやらフワフワした物がたくさん。
空気よりも軽そうなのに、たくさんあるからお布団があげられないんだよ。
あぁぁ、もっとちいさくて、幼稚園の頃にこのお話したら、ママはきっと
「なんて、可愛いお話を思いつくの?」
って、抱いてくれたのになぁ。
今朝もまた、お布団はなかなかセレナの上からどかせない。
ねぇ、ママ。冬の朝には冬の妖精がいるんだよ。
ママにはもう見えなくなっちゃったのかな?
ほら、パパは妖精のフワフワと戦って、お布団から出られないでいるのに。
パパのお部屋のフワフワは私のお部屋のフワフワよりも苦そうないろがついている。
あれは、きっとパパの昨夜のお酒の色。お酒も一緒になって、フワフワに入るんだね。
セレナの今日のフワフワにはほんのり何だかピンク色が混ざっている。
「あ、今日、先輩と待ち合わせて学校に行くんだった。」
セレナはフワフワを押しのけて、シャンと起き上がった。
『なぁんだ。フワフワは、自分の気持ち次第でこんなに軽くなるのか。』
「ママ、おはよう。」
「あら、今朝は早いこと。」
セレナは冬の朝でも、もうフワフワには負けない。眠りの精なんて名前を付けたのもセレナだから。
妖精はセレナの部屋から消えていた。
『あのフワフワは自分の気持ちが作っていたんだわ。』
パパも早く気付くといいのにね。
『ママは毎朝忙しくて、冬の朝の妖精と何て遊んでいる暇はないんだわ。』
セレナはママの事がいつもよりもっと大好きになった。
セレナに起きたい理由がある間は、冬になっても妖精はこないのだろう。
楽しく起きられる冬の朝。
妖精と一緒にウトウトする冬の朝も素敵だけれど、自分でシャンと起きられる冬の朝もとっても素敵。
セレナはきっと少しだけ大人になったのだ。
【了】
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