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真実
相田安子はゆっくりと喋り出した。
「さつき〜ばあちゃんは昔いろんな会社を経営していたの。でも最初から軌道にのっていたわけじゃなかった。
初めは女だからと舐められて相手にもされなかった。でもいつかわかってくれると思って融資をいろんな会社に頼んでまわってやっと融資が受けられたの。そのお陰で会社は大きくなったりいろんな事業にも挑戦できるようになったの。
さつきの会社が入っていたビルは一階から6階までばあちゃんの会社だった。
詐欺に引っかかったなんて噂がたっているけど実際は違うのよ。
会社が軌道にのってどんどん忙しくなってきた時、私は余命を告げられたわ。
だから私はビルを売ったの誰にも引き継いでもらおうとは思わなかった。
さつきの会社があるあのビルは広告代理店や宝石のお店そしてブランドのお店を入れた全てばあちゃんがオーナーだった。
初めはまだ幼かったさつきと妹の芽衣と娘の夏の3人に遺産を残すつもりだった。
でも初めからばあちゃんは知ってたの。娘の夏に何度も止めるように言ったわ妹ばかり可愛がるのを止めるようにとでも夏はやめなかった。
だから私はまだ小学低学年のさつきを連れ出してできる限り両親から離すようにしていたの。
きっとお金を娘や孫に残したらさつきにだけお金がいかなくなると思って残さない事にしたの。
そんな時、走ってる車に飛び込もうとしてたこの喫茶店の親子に遭遇してね。私が相田さん親子を助けたのよ。
そしてこの喫茶店をばあちゃんのお金で建てたの。ばあちゃんはあと少しで死ぬってわかってたから最後に人の役にたちたいと思ってね。
私はできる限り2人の生活支援をしてたの。
さつきにも会いに行きたかったけど身体がどんどん悪くなるばかりばあちゃんの弱っていく姿を見せたくなかった。
誰にもね。だから娘に頼んでばあちゃんは行方不明で何処にいるかわからないと言う事にしてほしいって頼んだのよ。
ばあちゃんが死ぬまでだけどね。ばあちゃんは時計もプロジュースしていてね。さつきが持ってるその時計は、ばあちゃんの会社のヒットした時計なんだよ。
その時計をしているといい事が起きると口コミで広がって女性に人気だった
ばあちゃんは時計を二つ売らずに取っておいたんだよ。さつきと芽衣に肩身として渡すように夏にもそう言ったんだ。
だけど夏はばあちゃんが死ぬと二つの時計を売って大金を手に入れた。
生前贈与として少しだけ遺産を渡していたのに。ばあちゃんが生きていた証に時計を置いていったと言うのに。
幸せを呼ぶ時計と言われていた時計はさつきと芽衣には届かなかった。
ばあちゃんはずっとさつきが心配でさつきの後ろにずっといて見守っていたんだよ。
死にきれなかったのは夏と旦那の秀樹が妹の芽衣ばかり可愛いがるあまり芽衣はわがままな人間に成長してしまった。
ばあちゃんはいつかさつきにも影響が出るような気がしてさつきの事が心配だっただからずっとさつきの後ろにいたの。
その時計はきっとばあちゃんの思いが時計に伝わってそれを持っていると幸せになるんだと思う。
でも良かった人から人に時計が渡って最後にはさつきと相田安子さんに渡ったんだからきっとばあちゃんの念が伝わったのね。
さつきもう二度と屋上から飛び降りようとしたら駄目よ。後ろから引っ張ったのも穴を開けたのも相田安子さんの身体を借りてばあちゃんがさつきを止めたんだ」
さつきは「おばあちゃん……ずっと私を心配して後ろにいてくれたんだね。でも何で相田安子さんはおばあちゃんが相田さんの中にいないと死んじゃうの?」そう言うと吉本みつは言った。
相田さんの母親の沙苗さんが病院で亡くなった時、相田安子さんは病院から母親が亡くなるって事を聞いて急いで走って病院まで行ったんだけどその途中で急に息苦しくなって倒れた。
ばあちゃんは嫌な予感がしたんだ。命の炎が燃え尽きそうだってこのままでは死んでしまう。
その時からばあちゃんは相田安子さんの中にずっと入る事にした。今までもたまに相田さんの中に入って人を助けた事があったんだ。
そして病室に入ったその時に前に見せてもらった喫茶店の絵が書いてあるスケッチブックが枕元にあったんだ。それを見て泣きながら相田安子さんは自分が死んだ事にも気づかないまま死んでしまったの。でも安子さんのお母さんの夢を叶えてあげたくて相田さんの中にばあちゃんは入っているの。
だからばあちゃんはこれから相田安子としてこの喫茶店を人気の喫茶店にしようと思ってる。
もともと経営方面は得意だしね。でも人に入ってるせいか最近は娘の夏の事もだんだん忘れてきてるのいずれさつきの事も忘れる。
安子さんの記憶だけが何故か鮮明にばあちゃんには残ってるの。
安子さんは病院で死んだからお母さんが最後の時の記憶が抜けているんだと思う。
その幸せになると言われてる時計を持って幸せになるのよさつき。ばあちゃんはさつきの事忘れても心では覚えているから」その時、さつきは言った。
「待ってばあちゃん私……私聞きたい事があるの。
何で会社の屋上にこの時計落ちていたの?私の前は雪山先輩が持ってた筈なのに……先輩は屋上には行ってないのに」
みつは言った「たぶんばあちゃんの想いが時計に伝わったのかな?わからないけど〜じゃあばあちゃん……もう、さつきの事忘れちゃうけどさつきはばあちゃん自慢の孫だから誰がなんと言おうと。だから頑張って生きていくんだよ」
「おばあちゃんおばあちゃん……」そう言いながら幸田さつきは涙を流して泣いていた。
暫くすると相田安子は言った。
「幸田さん何かあったんですか?そんなに泣いてそれにお店こんなに早く私〜閉めましたっけ?まだ稼ぎ時の時間なのに」
「相田さん今日は疲れたから休むって自分で言っていましたよ。だから休んで明日から頑張ってください」
相田は言った「そうでしたか〜最近記憶がない時があってでもたまには休む事も大事ですよね。
休ませてもらいます。ところで幸田さん何で泣いていたんですか?私でよければ相談にのりますよ」
さつきは言った「たいした事ないんです。ただおばあちゃんの事を思い出してしまって」
「吉本みつさんのことですね」
「そうなんです。それじゃあ私の役目はもう終わりですね。お元気で」
その時、相田安子は言った「私と友達になってくれませんか?吉本みつさんの事もっと聞きたいですしまた来てくださいね」
幸田さつきは言った「友達?嬉しいです。私には長い間友達なんていませんでしたから」
相田安子は言った「じゃあ友達になってくれるんですね」
幸田さつきは笑顔で「はい喜んで」そう言った。
相田安子も「今度これ見に行きませんか?お互い都合がいい日に1人で行ってもつまらないですしちょうどペアの券をお客さんから貰ったので」
幸田さつきはその券を見ながら大粒の涙を流した。
相田安子が見せたその券は幸田と相田が持ってる時計の時計展の券だった。
そして券には「吉本みつ幸せを呼ぶ時計展」と書いてあった。
さつきはきっとおばあちゃんは相田さんの他にもたくさんの人を助けていたんだろう。だから助けられた人達がこうして展示会を開いてくれているんだ。
おばあちゃんの事は忘れないからね。
幸田さつきは心の中で呟いた。
「幸田さん?どうかしましたか?」
幸田は言った「この展示会絶対行きます。いつがいいですか?」
幸田は相田に都合を聞いていた。
完
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