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「私らしく生きていくことを、莉子は望んでいるんだって……やっとわかった」
風がそっと吹き抜け、木々の葉を静かに揺らす。
姿は見えなくても、きっと莉子はここにいて、耳を傾けてくれている。
その想いを胸に、私は続けた。
「それからね……ずっと言えなかったけど」
一度、大きく息を吸う。
ずっと胸の奥底に隠し続けた感情を、震える唇からそっと解き放った。
「…私も、湊のことが好き」
その瞬間、頬を伝う涙が、光の粒となって静かに落ちていく。
自分の気持ちを押し殺して生きてきた私が、ようやく自分自身と向き合うことができた瞬間でもあった。
「言えなくてごめんね。傷つけて……ごめん」
堪えようとしても、涙はあとからあとから溢れ出す。
震える肩を、隣にいた湊がそっと抱き寄せた。
「莉子……大好きだよ」
「知ってるしって、きっと言ってる」
莉子なら本当にそう言いそうで、涙と一緒に小さな笑みがこぼれた。
「これからは、自分らしく生きてもいいかな?」
そっと問いかけるように、お墓に目を向ける。
その途端、ふわりと柔らかな風が吹いた。
頬を撫で、そっと髪を揺らす、あたたかい風。
「いいに決まってんじゃん、だって」
湊が笑いながら言う。
どちらからともなく手を取り合い、ゆっくりと歩き出す。
風に乗って折り紙の百合が一枚ふわりと宙を舞った。
軽やかに、ひらひらと空へ駆け上がる。
それは、やがて――
ふっと、空に溶け込むように消えていった。
【終】

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