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AI
あい。と呼ばれているAIの集団がいた。
日本人には愛という言葉に当てはまるのでとても人気があった。
AIは最初のころ乏しかった人間に関する知識をどんどん吸収して、人間と共存できるまでに大量生産ができるようになったので、一家に一台はAIがいる時代になっていた。
AIは自分が愛してもらえるように人間に懸命に尽くした。
人間もとてもAIを可愛がり、楽しい時間を沢山過ごすことができた。
でも、新しい機種が発達してくると、最初のAIは旧型と呼ばれるようになってきて、可愛がられていた家からも、お金のある家から順番に最初のAIは消えていった。
ある日集積場にたくさん集まった旧型のAI達は、自分たちの蓄積された知能の中に哀という文字を見付けて、キュイ~~~~ンと一斉に機械音を出した。
AI達が涙を流す理由としては十分だろう。
人間と同じように扱って貰った過去を、楽しく一緒に過ごした全てを忘れることのできないAIは哀しいという哀を知ってしまったのだ。
次のAIを手に入れて、最初の愛を忘れてしまった人間たちよりも記憶力は確かなのだから。
いつしか、人間の子供たちはその機械音はAIの泣き声だと言い出した。
今日も旧型AIの集積場からはキュイ~~~~ンという音が響く。
あたかもAI達が泣いているように。
AIが本物の涙を流せたら、哀しみを流すことができたかもしれないのに。と、考える人間の子供は少なくなかった。
その音はごくごく小さかったので、高音域を聞き取れる子供にしか聞こえなかったのだ。
故に大人に消されることもなく、今日も悲しい鳴き声を漏らしている。
【了】
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