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本棚に追加 二年くらいのこと?
そんな近い過去のこと「昔」て表現するか……?
ニカちゃんのほうを見ると、青ざめた顔で黙り込んどる。
何か、隠しとる。
そう確信して、少し低い位置にある顔を覗き込んだ。
「なあ、昔て、何のことや」
「…………」
「ニカちゃん、黙ってたら分からへんよ。どうしたん?」
「…………」
は、は、とニカちゃんの呼吸が浅くなっていくのを聞きながら、これはあかんと思った。
「フジガヤさんごめんな、とりあえず俺ら帰るわ」
「う、うん……。てかわたしも家こっちなんだけど……」
「送ってくわ。どっち?」
「……アタラヨくん家の近く……」
ほんまにどういうことや。なんで俺の家知っとる。
言葉少なに送り届けたフジガヤさんの家は、ほんまにたぬき酒から遠くない一軒家やった。ご実家やそうや。
おどおどしたまま家に入っていくフジガヤさんを見送り、ニカちゃんとふたりきりになる。
「おうち、帰ろか」
「……ごめんなさい」
「なん? ニカちゃん、悪いことしたん?」
「…………」
「してへんなら謝ることないよ。な?」
なるべく優しく声をかけて、コンビニパトロールもやめて、冬の寒い道を戻ってニカちゃんのアパートまで帰ってきた。
すぐ戻るからって暖房つけっぱで出てきたからあったかい。
靴脱いで、ダウンのジャケット脱いで、下に着とったんは部屋着やからこのまま、ニカちゃんと並んでベッドに腰掛ける。
「ニカちゃん。フジガヤさんが言うてた昔のこととか、俺が聞いてもええやつ?」
「……」
「大丈夫やって、俺怒っとらんよ、何に怒るんかもよぉ分からんけど」
「……」
「寒いかな? 手つなぐ?」
ぎゅう、と冷えていた手をつなげば、ニカちゃんの気持ちが分かるみたいな心地になった。
すごく怖がっとるな、というのが、表情とかそういうんやなくて、肌……いや、血液で分かるような。
感覚を分けてもらえるてこんな感じなんやな、と、発覚してから今まで特になんも意識せんで手をつないだりエッチしたりしてたんが丸分かりな感想を抱いてまう。
ニカちゃんの顔はずっと真っ白くて、唇が何か食べるみたいに閉じたり開いたりして。目だけが、ずっと一点を。ローテーブルの上に置かれたスマホをじっと見てた。
両手を握り締めて、しばらく待っていたら、ニカちゃんがようやく口を開いた。
「……、…………ずっと、騙していてごめんなさい」
「だま……、え?」
思てたんとは違うところからの切り込みに、思わず言葉が止まった。
そして、言葉を詰まらせながら告げられたことに、声を失う。
「太陽クン、ていう人は、存在しません」
✩

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