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「運転できる人ってかっこいいよね」
「え、そうなの?」
「うん、そうだよ。だから先生もいつも以上にかっこいいよ。こーんなことしちゃって。こーんなことしちゃって」
私がそう言いながらまた先生のマネをして右手を上げれば、それを横目で見た先生は「めちゃくちゃバカにするじゃん」と言って口元を緩めた。
「だってこーんなことするんだもん、こーんな」
「もう分かったって」
それからも何度もしていれば、最終的に先生は「しつこい」と言って少しだけムッとした。
それが私にとっては可愛くて、先生とは対照的にニヤニヤが止まらなかった。
このまま家に着かなくていい。
ずっと先生と車に乗っていたい。
そんな私の願いを打ち砕くように、ポケットに入っている携帯がブブッと短く震えた。
あ…連絡忘れてた…
車の時計に目をやると現在の時刻は十九時四十分だった。
サッと携帯を取り出し確認するとそれは玉井さんからの『ヨシノ様、本日何時頃帰られますでしょうか』という相変わらずバカみたいに丁寧なメッセージだった。
それに『今帰ってる』と急いで打ち送信した私は、携帯をすぐにポケットにしまった。
直後またポケットの中でブブッとそれが短く震えたのが分かったけれど、私はもういちいち確認したりはしなかった。
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