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『・・・あなたのことじゃなくて』
これは、数年前に実際に私が体験した不思議な出来事である。
それは、新しいアルバイトを探して、様々な見知らぬ街々を歩いていた・・・・・・。
そんな、とある日の事である。
何処へ行くのかも皆目、見当のつかない路線バスのバス停に1人のお爺さんがバスが来るのを待ちぼうけしていた。
あんぐりと口を開けて、餌を待つ池の鯉みたいにパクパクしていたので、少々、呆けているのかな?と、悪いとは思いつつも、そんな風に感じてしまっていた。
そして、お爺さんの横を通り過ぎようとした時のことであった。
『御久し振りですね。
あの時には随分とお世話になりまして・・・・・。』
見知らぬ御老人に、ペコリと頭を下げて、まるで上司か親族みたいな丁寧な挨拶をしてくるのであった。
私は小首を傾げ、質問してみた。
「あの~、失礼ですが、どこかでお会いしたことがありましたか?」
すると、御老人は、思いもしない驚愕な一言を投げ掛けて来た。
『うむ、ホッホッホッ。
あなたじゃなくて、あなたの後ろにいる人にね・・・。』
なんだ、私の勘違いか!と振り返ってみると・・・。
そこには、誰もおらず、気味が悪くなって御老人の方をもう一度、振り返ってみると・・・・・・・!!
にこにこと微笑む御老人がいた。
・・・なんだよ、呆けてるだけか?
・・・と思いながらも、私が見えなくなるまで、いつまでも手を振り続ける御老人の姿が表現できないモヤモヤとした何かを感じさせるのであった。
私には、どんな背後霊がついているのだろうか?と本気で考えてしまいたくなる様な不思議で奇妙な出来事であった。
~第一夜・終~
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