第二章 帰郷

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「荷物はどうせ俺ん家に持っていくんだし、貴重品以外はそのまま車に乗せといていいよ」 「わかった」 空港から一時間半ほど。私は先生の運転で、一ヶ月ぶりの母校に足を踏み入れた。 約束の時間よりも少し早かったものの、先生が事前に連絡をしていたようで着いたらすぐに面接をすることに。 職員室の扉を開けると、中にいた教師たちが一斉にこちらを見た。 「あ、深山先生。おかえりなさい」 一番入り口側にいた女性教師が先生に声を掛ける。 「ただいま戻りました。あれ、教頭知りません?」 「教頭なら今応接室でお二人が来るのを待ってると思いますよ」 「ありがとうございます」 先生に倣って私も小さくお礼を告げる。 女性教師はにこやかに私に会釈してくれた。 他の先生方は試験作りに集中しているのか、特にこちらを見向きもしない。 やっぱり私、来るタイミング間違えたんじゃ……。 皆すごく忙しそう。 しかしこのまま帰るわけにもいかないため、音を立てないようにその横をすり抜けて応接室へ向かう。 「教頭、野々村さんがいらっしゃいました」 先生が応接室のドアをノックすると、中から「どうぞ」という声が聞こえた。 「行っておいで」 先生に促されて中に入ると白髪混じりの男性が立ち上がって私に一礼した。 「お待ちしておりました。野々村さん、でしょうか」 「はい。野々村美也子と申します。本日はお時間をいただきありがとうございます」 「いえいえ、こちらこそ。教頭の田宮と申します。遠いところお越しいただいてありがとうございます。どうぞお掛けください」 「ありがとうございます。失礼いたします」 皮張りのソファに腰掛けると、田宮教頭も向かいのソファに腰を下ろした。 履歴書を渡すとパラパラと目を通してからテーブルに置く。 「面接なんて名ばかりなので、そんなに気張らなくても大丈夫ですからね」 「あ……、すみません。緊張してしまって」 「ははっ、移動でお疲れのところでしょうし、無理もございません。気楽にお話ししましょう」 「ありがとうございます」 よくよく考えたら転職活動は初めてのため、ガチガチに緊張していた私。 田宮教頭の穏やかな雰囲気と笑顔で、少しばかり緊張がほぐれた気がした。 「今も事務職なんですよね?」 「はい。ただ学校事務とは全く業種が異なるので、そこが少し不安ではあります」 「ちなみに今の業務内容を伺っても?」 「私は弊社の商品を卸している顧客情報のデータの管理を主にしております。各法人様にある弊社の商品の在庫管理や受注発注など……ですね。その他にも細かい業務を少し」 「なるほど。確かに今までとはガラッと内容は変わりますね。ざっくり説明しますと───」 渡された資料を見ながら仕事内容を聞く。 予想通り業務は今までと大きく変わるものの、使うソフトは一緒だったりと今までの経験が全く無駄になるということもなさそうだった。 ただ、仕事量がものすごく多い。これは大変そうだ。

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