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1.罪名は
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「ーーー罪名。ヒルデ・ベルンシュタインは、ゲオルク第二皇子と共謀し、ヴィルヘルム皇太子殿下を誘惑し、職務を怠慢にさせるほどに溺れさせ、さらには毒を盛ろうと…………」
ああ。今回もまた罪が暴かれてしまった。
神聖な帝国裁判所の中央、審議台。神々しいマリア像が見下ろしている場所。
ー被告人席。
会場の多くの関係者と、裁判長の前で私は矢面に立たされている。
傍聴席にいる、ヴィルヘルム様を見るのが怖い。
絶望したような顔をするあなたを……
きっと全ての罪を知ってしまったのだろう。
あなたを殺そうとした陰謀も、何もかも。
事実を知ったヴィルヘルム様が、一体どんな瞳で私を蔑み見ているのかと思うと怖くて堪らない。
確かに初めはあなたを殺すつもりだった。
けれど、私にはできなかった。
もしも私に最も相応しい罪名が与えられるとするならば、それは「あなたを愛し、溺れてしまった」ことだ。
だけどこれで漸く終わる。あなたへの愛も。
裏切りの苦しさや、葛藤も。
これから私は皇族の殺害未遂の犯人として処刑されるだろう。
ヴィルヘルム様に心底嫌われて死ぬはずだ。
願わくばもう二度と……………………
「裁判長。発言を宜しいでしょうか?」
傍聴席から、久しぶりに聞くヴィルヘルム様の澄んだ声がした。
すうっと一本の逞しい腕が伸びる気配が。
何度も触れ、何度も触れられたあの手が。
「発言を許可します。ヴィルヘルム皇太子殿下。」
「ありがとうございます。裁判長。」
ヴィルヘルム様?一体何を言うつもり?
恨みごと?
それとも、自分を裏切っていた女に酷い罰を与えて殺せとでも言うつもりかしら。
きっとそうね。私を殺したい程憎いと…
「先程の私の妻の罪名についてですが、少々、語弊があるようです。
残念ながら、妻であるヒルデが私を誘惑し溺れさせたのではありません。
純真な妻を誘惑し、溺れさせたのはこの私です。
なので罪があると言うのなら、それは私だ。」
「ヴィルヘルム様?」
一体何を言っているの?
ついに私は傍聴席にいるヴィルヘルム様を見上げた。
癖のある銀の髪に、南国の海のように真っ青な瞳。スラリと伸びた背丈。男らしい喉仏。
シンプルながらも皇家専用の上品な質感の服を纏っていた。
顔は決して笑ってなどいないのに。
ただ驚きに満ちた瞳をする私を、あなたはいつもと変わらない温かい眼差しでそっと見下ろしていた。
━━━━━━━いつから。
一体いつからヴィルヘルム様はこんな風に、私を温かい瞳で見てくださる様になったのだろう━━━━━━━━━━━━━━━。
あれは、まだ私が幼い少女の頃の話だ。
いや、どこから話したらいいのだろう。
私はすでに、何度か人生をやり直している。今回で三度目。
一度目の人生で私はやはりヴィルヘルム・ベルンシュタインの妻だった。
正確に言えば、彼と同じ魂の人の。

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