106人が本棚に入れています
本棚に追加
19.逃がさない
今度は失敗しないように。ゆっくりと近づく。
彼女が何を思っているのか。
真意を見極める。私は帝国の皇太子。
彼女にしてあげられる事はすべてしよう。
何もかも、捧げよう。
三度目。ゲオルクの情報を聞き、すぐに彼女の身辺調査を開始。
一度目の人生でゲオルクのスパイをしていた執事を捕まえ、ゲオルクの企みを吐かせる。
貧民街出身の娘。今度の名前はヒルデといった。
一目であれが彼女だと分かる。
体の弱い母親と幼い弟達が人質に。従者に密かに救出を依頼。
ゲオルクに気づかれないよう見張を交換して、監視をつける。
出会った瞬間からヒルデに歩み寄り、ずっとヒルデにしてあげたかったことをすべてやる。
豪華な部屋、ドレス、靴、ティアラ、宝石。
食事、猫、庭園、指輪。あげられるものはなんでも。
誘惑もする。ろくに誘惑もできない初心な妻が愛おしくてたまらない。
こんなに華奢で、どうやって私を殺そうと?
何をするにも妻はかわいい。
「後ろから貴方を抱え上げ、ベッドに押し倒し、一晩中抱きたい。」
と言いたいが……だめだ、怖がらせてどうする。
ゆっくり間を詰めないと。それでも十分彼女を求めた。
ついにゲオルクは、彼女に毒の瓶を渡したと白状した。
今回は先手を打つ。毒はすでに中身を入れ替えてある。証拠品として押収してある。
彼女を抱いたあと、また、眠ったふりをした。
やはりヒルデは、哀しげに嗚咽して……
私の頬にキスをし、儚げに「さようなら、ヴィルヘルム様。……愛していました。」と呟いた。
愛おしさが倍増する。やはり君は、私を愛していたのだな。
「ヒルデ。今度こそ逃がさない。」
仕事は事前にやっておく。ゲオルクに捕まっていたヒルデの家族はすでに保護した。
ゲオルクを徹底的に尋問し、全てを吐かせる。
だからもう、逃がさない。何の問題もない。
貴方は私のものだ、ヒルデ。
裁判ではほとんど、妻の罪をなかったことにした。「愛に溺れさせたのはこの私」だと。
家族を人質に取られ、脅迫されただけだと。私は妻を許すと宣言した。
彼女がしたのはせいぜい、私を深く溺れさせた事くらいなのだから。
もう、分かっている。今世でも私はヒルデを愛している。
瀕死なくらいに。

最初のコメントを投稿しよう!