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風が強く吹く夜。男は暖房をがんがん効かせた部屋で、パソコンに向かう。
「さむ」
男は社会に憤っていた。自分を切り捨てた社会に。クソのような社会を運用する人間に。
男は、自分が運営側に回ればきっともっと良い世界にできると考えている。アイデアもある。だが、それを披露するチャンスがない。自分が比較的弱者だから。世界は不平等だから。理不尽だから。
どうして自分にはチャンスがないのか。パソコンを眺めていると、ふと思いついた。そうだ。最近、流行りのAIに聞いてみよう。何かヒントが見つかるかもしれない。他にもアイデアをブラッシュアップできるかもしれない。男は謎の行動力でAIを起動させる。
「まずはAIの性能を試してみるか」
男は訊ねる。
【何故、弱者の地位は低いのか?】
数秒、経過しAIは答える。
【弱者の地位が高くなり、支配者側に移ると、必ず道を間違え社会が成立しなくなるからです】
AIの言葉に男は激怒した。わなわなと肩が震える。男は感情のままにキーボードを打つ。
【弱者が必ず道を間違えるという根拠は?】
回答に少し時間がかかる。やはりAIはダメだな。男の怒りが少し落ち着く。すると画面に回答が映る。
【弱いから。だから道を間違えます】
男は言葉を失った。だが、すぐに反論の言葉を考え始める。しかしそれでも返す言葉が見つからない。やがて、どんどん、と扉を叩く音が聞こえた。母だ。母は男の名前を呼び、用件を伝える。
「雪かき手伝ってくれない?」
申し訳なさそうな声。男はAIに抱いていた怒りを母にぶつける。
「うるせええええ!」
奇声にも似た声を張り上げる。すると兄が母に何か話している声が聞こえた。耳をすます。
「母さん。あいつはもういいって。どうせ何もできないんだから」
「でも」
男はまた叫ぶ。二人の気配が消える。男は暖房の温度を二度、上げた。
どいつもこいつも。何もわかっていない。
完

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