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プロローグ
走る。
息が上手く吸えない。
死ぬほど苦しいけれど、私は走る。
走って、走って、必死に足を動かす。
絶対に後ろは振り返らない。
あーだけど、怖い。
苦しくて怖い。
息が切れる。
右手にスマホ、ポケットにはわずかなお金。
私には今それしかない。
苦しいけれど立ち止まれない。
とにかく走る。
ひたすら走って、走って、走って、私にはそれしかない。
走って、走って、走り続ける。
どこへ?どこに向かえばいい?
私はどこに行ったらいい?
自分の問いかけに、私は答えを持っていない。
こんなに必死に走ってるに、行くところがない。
私はどこに向かへばいいのだろうか?
わからない――――、
でも立ち止まれない、とにかく走る。
走って、走って、このまま全てを捨てようか、
私の中に芽吹いた悪魔のささやきは、一瞬で私を虜にする。
そうだ、捨てればいい――――、全部全部、捨てればいい――――、
決めたーー、
私はすべてを捨てる。
重たい荷物を、絡みつくその手を、弦のように伸びてくるその視線を、全て、全て捨ててやる。
だって、もうそれはいらないから、
私には必要のないもの、
その時、突然鳴り響いたスマホの着信音に心臓が止まるかと思った。
慌てて狭い路地に隠れ、あたりの様子をうかがう。
着信音が今も響いている――――、
失敗した、
音を消しておけばよかった、
いや、そもそも電源を切っておけばよかったのかも、
切れることなくなり続けるスマホ。
相手が誰かを確認しようとして、私は息を止めた。
え、誰?
それは、知らない番号だった――――、

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