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「それ、俺用だったんだ?」
「あ、うん…。雨止んだからいらなくなっちゃったけど…」
「あぁ。雨の事?今日は一日雨だと俺も思ったんだけどね、天気予報ではさ」
「うん。ほんと、そうだよね…」
「ガッカリした?」
「え?」
「雨が止んで」
「……別にしてない」
「そうなの?」
「うん、だってこうして会えたし」
「会えたし…………。そんなこと言われるなんて思ってなかったな。まじでびっくり」
「そう?」
「あぁ」
「もう、行こう」
「うん、そだね……。一緒にいられる時間がたっぷりあるといいなぁ」
「……」
5分ほど無言で歩いたら、ポツポツと雨が降り出した。
2人して空を見上げ、落ちてくる粒を見つめ、今度は顔を見合わせて笑った。
「やっぱり降ったね!」
「あぁ、降った降った!」
雨で喜んで笑う2人、そうそういないだろうな。
私は矢島くんに黒い傘を渡してから、自分も傘をさした。
2人並んで歩くこの道が、一年前の自分たちを思い起こさせた。
到着した我が家に、どうぞと招き入れる。
「今日、誰かいる?」
玄関の中で靴を脱ごうとしない矢島くんが私に尋ねてきて、
「いないよ」と答えれば、「莉里ちゃんも?」と。
「え?あ、うん」
びっくりした。
莉里の名前が出てきたことも、いるかどうか聞かれたことも、一年前に教えた会ったこともない妹の名前を彼がまだ覚えていたことも――――。
「なぁんだ、残念だな」
残念そうに肩をすくめたその姿も、
残念に思ってくれるんだ…、
何もかもが私を驚かせた。

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