第二章 ~親友との…~

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――私は眼鏡はどうでも…って、べ、別に志貴の事なんて好きじゃないんだから …私は何を考えているのだろう。 クダラナイ 「えっ、何を言ってるの遠野君?」 戦闘に不必要な事柄についての思考を排除する。 「聞こえなかったか?ならもう一度言う。」 志貴がどこからか短刀を取り出す。私は銃の安全装置をはずす。 「俺の為に死んでくれないか?」 さつきはやっと何を言われたのか解ったらしい。瞳は恐怖と絶望に彩られている。 イイ表情ダ。アナタノ不安ヤ恐怖ガ私ノチカラトナル 「あああああ!」 彼女が絶叫をあげる。恐らく感情が臨界を振りきったのだろう。辺りの景色が荒れ果てた荒野に変わっていく。 『リアリティ・マーブル』カ!? リアリティ・マーブル、つまり固有結界は空想具現化(マーブル・ファンタズム)の亜種で、その者の心象世界を形にし現実に侵食させた結界の事を指す。効果はまさに十人十色だ。単純に自分の心を具現化するような物だから当たり前ではあるが。 「嫌だ嫌だ嫌だ!」 「まいったね、どうも」 彼が肩をすくめる。その姿や声さえ今は曖昧だ。元を正せばあなたが余計な事言ったせいだと思うが?まぁ、さつき相手に志貴を出した私にも責任はある 「全部なくなっちゃえっ」 どうやらこの固有結界の効果は魔力の消滅のようだ。彼は最初からいなかったかのように消えている。 …役立タズガ それにまた悪性情報を具現化しても無駄だろう。そもそも具現化出来るかさえ怪しい。つまり魔力なしで戦わなくてはならない訳だ。だが生憎私は魔法使いではない。魔力がなくても戦える。 「シオン、私もう怒ったんだから!」 言葉通り彼女の目には怒りが宿っている。やれやれ。代行者とは違う意味で戦いずらい相手だ。直接戦うのが厭だったから彼を使ったのだが…逆効果だったらしい。こうなったら仕方ない。私も感情は捨てよう。今はただこの戦いを終らせよう。後悔も、悲しみにくれるのも後回しだ。さようなら、人間だった私。そしてありがとう、今まで親友でいてくれたさつき。私はこれから持てる力の限りあなたを殺します。許してくれとは言わない。私は、ただ… サァ、終リノ始マリダ! 彼女が地面を蹴って跳躍する。 「いっくよ~」 一瞬の内に私の目の前に拳が迫った。軽く横にステップをとり攻撃を避ける。さっきまで私がいた場所の地面には深々と穴が空いていた。力は予想数値以上のようだ。
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