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揺さぶられる恋と、通り過ぎた恋
あれ、こうなったのって一体いつからだっけ?
顔を伏せてわたしの隣を歩きながら、ぼーっとしていて、少なくとも意識を私のこと以外に飛ばしていそうな横顔を視界の隅に入れて、ふとそんなことを考えた。
「ねえ、今日はどうする?映画はこの間見に行ったばっかりだし〜。あ、今日はこのままお家にお邪魔してもいい〜?」
「…」
問いかけるけれど、返事は返ってこない。
彼はわたしの声なんて全く届いてないみたいに、相変わらず床に視線を落としている。
「稜?」
「…あ、ごめん。俺ん家?」
この人、いつからこんな上の空なんだっけ?
どこか別のことに意識を持っていかれている彼の名前を口にすると、やっと、ハッとした様子で顔を上げた彼の綺麗な瞳がわたしを捉えた。
「うん!そう!今日稜の家行ってもいい?」
どこかおかしい気がする彼に気づかないふりをして、わたしは笑顔を作りながら問いかける。
「ああ、いいよ。俺ん家行こうか」
「やった!ねえ、わたし最近配信されたばっかりの映画に気になるやつがあってね?」
ふわりと優しい、いつもの笑顔に意識がわたしの方へと戻ったことにほっとして、スマホの画面を向けようとしたわたしは、
「あ、待って采星」
わたしの名前を呼びながら今度は申し訳なさそうに眉を下げている姿をみて、嫌な予感がした。
「…ん?なに?」
「ごめん。今日家無理だったから違うところにしよう」
「え、あ〜うん。わかった」
そんな嫌な予感は的中していて、正直こころのなかでまたか、とゲンナリした。

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