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稜はわたしを責めることなく、ただ静かに、優しさだけを滲ませて笑った。
「だからさ、采星。俺ら笑って、終わらせようよ」
稜の言葉に、うん、うん。と何度も首を縦に振りながら答える。
依然として涙を溢すわたしに、口角を上げた彼が「采星、顔がひどいことになってる」と言いながらティッシュを渡してくれた。
「……やばい?」
「うん。相変わらず可愛いけど」
「……うう、あんまり、優しくしないで」
ティッシュで目もとをおさえながら聞くわたしに、変わらず優しい瞳を向けてくれるから、また涙が自然と流れてしまう。
「事実言っただけじゃん」
「……もっと、ひどいこと言ってくれていいんだよ」
「だって、いい男のまま別れたいじゃん?」
「稜はずっと、ほんとにずっと、いい男だよ」
「采星、後悔するかもな」
「そうかも」
いたずらな笑みと瞳をこちらに向ける彼につられて、わたしの口もとも綻んでいく。
「ねえ、稜。気になってたこと聞いてもいい?」
「どーぞ?」
「稜って、長谷川さんの好意には気づいてる、よね?どうしてされるがままだったの?」
稜は、わたしの変化を察していたみたいだし、きっと、感覚は鋭いほうなんだと思う。
周りの人だって、長谷川さんの好意に気がついているくらいだから、稜本人だって、とっくに気がついているだろう。

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