穴を掘る

5/5
前へ
 /5ページ
次へ
 穴の先に広がるのは、真っ暗な闇。音の一切を飲み込んでしまう漆黒。  私はふぅと息を吐くと、肘で額の汗を拭った。真っ黒な土が服に付く。  「ははっ、汚い 」  笑う私の頬を幾筋もの涙が伝っていく。振り向くと心配そうな表情(かお)をして、カリナが私を見ていた。  綺麗な、綺麗なカリナ。もう、私にはあなたは必要ない。  穴の縁に立っていたカリナの肩を、躊躇なく私はトンと押した。  「え……? 」  ぐらりと揺らいで、カリナが穴の方へ倒れていく。私を掴もうとした手が空を切った。  「さよなら、 」  「いやっ、駄目よ。カリナッ! 」  信じられないものを見る様に私を見つめたまま、カリナが穴に落ちていく。私が掘った深い穴。底は見えない。  私を呼ぶ叫び声が段々小さくなっていき、そのうち全く聞こえなくなった。  お別れよ、私の良心(カリナ)。  静寂が消えて、心が現実に戻ってくる。  私は足元に落ちている『高畑 華梨奈 』と名前が書いてあるスクールバッグを拾った。そして、上部のファスナーを開き、何本も持ってきた包丁のうちの一本を取り出す。  鈍色の刃物の、美しく研がれた銀色に光る刃先が魅惑的に輝いていた。  口元に笑みが浮かぶ。もう何も、私を止めるものはない。                《ヲワリ》 2025.3.30 公開 同日 修正      

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加
広告非表示!エブリスタEXはこちら>>