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本棚に追加この花は散るか
文化祭が迫り、準備期間となった高校は雰囲気がいつもと違う。なんというか、浮ついた空気を感じる。これが文化祭マジックとかいう現象の前兆なのだろうか。
「あー、だる~」
と、五十嵐が文句でたらたら青い紙を手に取る。わたしたちは教室で二人、紙で花を作る。文化祭の飾り付けで必要になったからだ。廊下では賑やかな声が反響してくる。それに混じり、ひそひそと話す声。男子と女子が二人で作業をしているからか「何あれ、尊い」と笑いあっているのが聞こえた。はあ。これも文化祭マジックか。祭りの空気にあてられたようだ。
「というか、なんで備品の花が使い物にならなくなるかなー」
「しょうがないでしょ。造花とはいっても、いつか劣化してダメになるんだから」
「ふっ。どんなものでもいつか終わりが来る、か」
「うざ」
口だけでなく、手も動かしてほしい。
「にしても花岡は器用だな」
「ああ。わたし【花咲かばあさん】の異名で呼ばれたことあるから」
「なにそれ、かっけー」
どこが?
「なんでそんな異名で呼ばれるくらい、花作りが上手いわけ?」
「あー」
話していいものだろうか。数秒、考えた末、わたしは口を開いた。
「高校一年の頃、好きな先生がいてさ」
「あら」
「で、その先生から教えてもらったの。これの作り方」
なんてことはない。退屈でありふれたエピソードだ。話を終えると、五十嵐は次の紙を取りながらわたしに諭すように話す。
「まだその先生に好意があるなら、気持ちを伝えた方が良いと思う」
「へ?」
「いやほら。好きな気持ちを抱えたまま歳を取ると、拗らせるらしいし。それに、気持ちをくすぶらせていると、その想いに取り憑かれて将来、後悔する」
「五十嵐……」
「って、兄貴が言っていた」
どや顔で誇らしそうにしている。結局全部、人づてから聞いただけじゃん。わたしは思わず吹き出し、笑った。
「今、笑うところだったか?」
「ううん。ごめん。でも、そっか」
わたしも、この空気にあてられてみようかな。
「ありがとね。五十嵐。気持ち、ぶつけてみる」
「おう。頑張れ。応援するよ」
例え、この恋の花が散ることになるとしても。伝えておかないと。
「五十嵐のことが好きです」
「……ん?」
「本気のやつだから」
「え。だって、さっき」
「それは一年の頃。今は三年だよ?」
やっぱり先生にフラれたこと、五十嵐は知らないんだろうな。その後、泣いているわたしに声をかけて、しばらくそばに居てくれたこと。理由も聞かず慰めてくれたこと。わたしは忘れない。
「そうだったんだ」
「返事、できそう?」
「そうだな。ああ。できそう」
「聞かせて」
五十嵐はわたしの瞳を見つめる。真剣だ。良かった。
「俺は……」
そして五十嵐は想いを伝える。
完

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