この花は散るか

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この花は散るか

 文化祭が迫り、準備期間となった高校は雰囲気がいつもと違う。なんというか、浮ついた空気を感じる。これが文化祭マジックとかいう現象の前兆なのだろうか。  「あー、だる~」  と、五十嵐が文句でたらたら青い紙を手に取る。わたしたちは教室で二人、紙で花を作る。文化祭の飾り付けで必要になったからだ。廊下では賑やかな声が反響してくる。それに混じり、ひそひそと話す声。男子と女子が二人で作業をしているからか「何あれ、尊い」と笑いあっているのが聞こえた。はあ。これも文化祭マジックか。祭りの空気にあてられたようだ。  「というか、なんで備品の花が使い物にならなくなるかなー」  「しょうがないでしょ。造花とはいっても、いつか劣化してダメになるんだから」  「ふっ。どんなものでもいつか終わりが来る、か」  「うざ」  口だけでなく、手も動かしてほしい。  「にしても花岡は器用だな」  「ああ。わたし【花咲かばあさん】の異名で呼ばれたことあるから」  「なにそれ、かっけー」  どこが?  「なんでそんな異名で呼ばれるくらい、花作りが上手いわけ?」  「あー」  話していいものだろうか。数秒、考えた末、わたしは口を開いた。  「高校一年の頃、好きな先生がいてさ」  「あら」  「で、その先生から教えてもらったの。これの作り方」  なんてことはない。退屈でありふれたエピソードだ。話を終えると、五十嵐は次の紙を取りながらわたしに諭すように話す。  「まだその先生に好意があるなら、気持ちを伝えた方が良いと思う」  「へ?」  「いやほら。好きな気持ちを抱えたまま歳を取ると、拗らせるらしいし。それに、気持ちをくすぶらせていると、その想いに取り憑かれて将来、後悔する」  「五十嵐……」  「って、兄貴が言っていた」  どや顔で誇らしそうにしている。結局全部、人づてから聞いただけじゃん。わたしは思わず吹き出し、笑った。  「今、笑うところだったか?」  「ううん。ごめん。でも、そっか」  わたしも、この空気にあてられてみようかな。  「ありがとね。五十嵐。気持ち、ぶつけてみる」  「おう。頑張れ。応援するよ」  例え、この恋の花が散ることになるとしても。伝えておかないと。  「五十嵐のことが好きです」  「……ん?」  「本気のやつだから」  「え。だって、さっき」  「それは一年の頃。今は三年だよ?」  やっぱり先生にフラれたこと、五十嵐は知らないんだろうな。その後、泣いているわたしに声をかけて、しばらくそばに居てくれたこと。理由も聞かず慰めてくれたこと。わたしは忘れない。  「そうだったんだ」  「返事、できそう?」  「そうだな。ああ。できそう」  「聞かせて」  五十嵐はわたしの瞳を見つめる。真剣だ。良かった。  「俺は……」  そして五十嵐は想いを伝える。  完

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