病弱で太っていたので婚約解消されました。

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病弱で太っていたので婚約解消されました。

「アビゲイル。君との婚約を解消したい」  爽やかな新緑の風に乗って私に届いたのは婚約者からの思いがけない言葉だった。  今日はお天気も相まって体調が少し良かったのだ。  それなのに… 「…セドリック様?それは…」 「すでに両家で話は済んでいる。君のご両親も了承済みだ。 ただ、私もけじめとして婚約解消については自分から伝えようと思った。これは私からの最後の情だと思ってくれ」  淡々と話すセドリック様の表情は硬い。  いや…硬いのではない。その目は冷たく蔑むような色さえあった。  その目に気づいて胸の奥がきゅっと苦しくなるのを感じた。 「どうして…どうしてですか?」 「どうして?気づかないのかい?君の家には鏡がないのか?」  鋭利な言葉が刺さる。  あぁ、そうか…私が、こんな姿だから…  ショックを受ける私に、セドリック様は更に言葉の刃を振りかざした。 「こんなことを私に言わせないで欲しい。  確かに君は王弟殿下の娘でロックフェラー公爵令嬢という素晴らしい肩書がある。ただ、逆に言えばそれだけだ…  君は病弱で、原因不明の体調不良を抱えていて、将来的に子供に恵まれるかすらわからない。  私は自分の未来を選んだんだ。君に私を責めることはできないはずだ」  淡々と説明する彼が自身の正当性を主張すればするほど、その言葉は私に鋭く刺さった。彼はこの機にと更に言葉を続けた。 「それに、もし子供が生まれたとして、その子供に君と同じ病気が現れたらと思うと気が気じゃない。君は病気になって可哀想ではあるが、未だに病名すら分からない病だ。今後どうなるか分かったものではない」 「で、でも…一時より少し良くなってきました。今日だって、だいぶ体調も良くて…」 「そんなことを言って、また社交界で私に恥をかかせるつもりか?  君は私の気持ちがわからないのか?  君みたいな姿の令嬢が他にいたかい?そんなに太って、少し歩くだけでゼェゼェと醜い息遣いをして、本当にパートナーとして恥ずかしかったよ。  まだ婚約で良かった。これが結婚してから気づいたなら一生ものだ。ロックフェラー公爵家との婚約解消はウィルミントン侯爵家には痛手ではあるが、今別れるほうがお互いのためだろう?」  《太って》、《醜い》という言葉に衝撃を受けて固まった。指先の感覚がなくなるほどスカートを強く握った。  確かに、私は美しくはない。  健康でもないし、6歳から発症した原因不明の病のため、食べた以上に肉がついてしまう体質になっていた。  何をしてもちっとも痩せない。お菓子も我慢して、食事も最低限にしてもこの身体はどんどん肉を増やしていってしまう。  私の苦労を一番近くで長く見ていたはずなのに… 『早く治るといいね』と言って笑顔を見せてくれていた貴方が私の心の支えだったのに… 「…私のこと…そんなふうに、思っていらっしゃったのですか?」 「誰も好き好んで君を選んだりしないだろう。ただ、君は父上に恵まれているから、そのうち結婚位はできるだろう。  私は遠慮させてもらうが…」  そう言ってセドリック様は口を噤んだ。  嫌な沈黙の中、明るいお日様の匂いと爽やかな緑の匂いの乗った風が私達の間を流れていった。  それが更に私の悲壮感を加速させた。  もう言いたいことも無いのだろう。  言いたい放題だったものね…  彼は少し気まずそうに席を立って、一礼して春の香りに包まれたテラスを後にした。  足が震えて動けない私だけがその場に取り残された。  ひどいわ…エスコートもしてくれなかった…  もう婚約者じゃないから…そうよね…  遅れてきた悲しみの感情が、雫になって小さい目から溢れ、肉付きの良い頬を伝って落ちた。  婚姻年齢の15の誕生日を迎える直前で、私は惨めに婚約者を失った…

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