夏休みの日に

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「 西条さまは、私の息子のようです。お会いできて、幸せです 」 「 いやあ、私こそ。幸せです。私の父は厳格ですから、腹を割って話したことなどありません。でも、菊池さまとなら、本音で話せると思います 」 父たちは、涙を流して話しをしていた。 私は、孫と言われて驚いた。 父たちが、ビールを飲み終わったあと、私は声を立てて笑った。 「 キャハハ~ 」 孫と言った、ご婦人はもういなかった。 私たちは、かき氷屋を出て、商店街で別れた。 父が、本を見たいと言ったのだ。 「 それではこれで、失礼いたします。今日は、ありがとうございます 」 菊池さんのお父さんは、深々と頭を下げた。 父と兄と、菊池さんを見送った。 なぜか、菊池さん親子とは、これでお別れのような気がした。 私の予感は、当たっていた。 菊池さんと、お父さん、お祖母さんは、夏休みが終る前に、福岡に戻ったのだ。 私は、今でも、孫が三人もいて幸せだ。 そう言って泣いた、菊池さんのお父さんの顔を忘れてはいない。 高くて怖い馬も。馬屋のおじさんとおばさんも。 幸せな三日。夏休みの三日。 もう来ない三日。忘れない三日。 四才の夏。 さようなら。そして、ありがとう。 七月二十七日

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