第八章 扉の鍵

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 彼女の独白に千夏は内心、軽いショックを受けながら、それでも何ともないフリを装う。 目の前にいる彼女は、少し前までは私達の、私達だけの姉だった。 でも、今は違うのだ。 もう私達だけの姉ではない。 (そうよ……。 だから自分達を1番に考えて欲しいだなんて。そんな我儘は…言っちゃいけない) 確かな寂しさを感じながら、それを、彼女に悟られることのないように精一杯の笑みを顔に貼り付ける。 「仕方ないわよ。 だって、姉さんは“二条水城"だもの」 「そうね…。 私は二条水城ですものね…」  千夏の言葉に静かに頷くと、彼女はふと瞼を附せた。その頬を、涙が一粒ゆっくりと伝う。
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