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千夏(ちなつ)は手にしていたノートを静かにたたむと、そのままベッドに倒れこみ、大きなため息をついた。
もう、何度目だろうか。
何度、この文章を自分は読んだのだろう。
一体、いつになれば、私はここから抜けだせるのだろう。
「零……」
どこまでも無機質な白いだけの天井を見ながら、千夏はその名を呼んだ。
愛しい、愛しい、妹の。
もういない片割れの名前を。
瞼を閉じればうつる、妹の笑顔。耳に残る、自分の名前を呼ぶ声。
もう、何ヵ月も前のこと。
それでも色褪せない過去(キノウ)の記憶。
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