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つまりは莉子も、今日、そういうつもりでここに来ている。
さらに今日この日を迎える前に、もう一つ俺には踏んだ段階があった。
先生からの助言だ。
付き合い始めて2ヶ月。よく耐えた方だと義友には言われた。
どのくらいでするのが普通なのかと問いかける。
「俺はまおみとは1週間くらいだったけど」
絶望した。
もしそれをまだまおみを好きな時期に聞いていたら、俺はたぶんこいつを◯った。
確実にだ。
けれど今は違うので、ヤツの命は守られた。
正直に言おう。俺は未経験だ。
莉子はどうなのか知らないけれど、「焦るなよ」と義友先生には助言を受けた。
焦るなとだけ刻まれた俺の心に、今更になって不安が押し寄せてきた。
すでに好きになった相手とそういうことをしてしまったら、もっと好きになってしまうんじゃないだろうか。
もしくは俺にがっかりした莉子に嫌われてしまうんじゃないだろうか。
ああ、怖い。失敗したらどうしよう。
何をしたら失敗になるんだろうか。
何を以てして成功と言えるんだろうか。
先生にもっと性教育に力を入れてもらえばよかった。
ああ、怖い。でも、莉子とそういう関係になりたい。
「お風呂、ありがと。希一郎も、入ってくる?よね?」
お風呂から出てきた莉子は頬が紅潮していて、俺はドキドキした。
この緊張感がバレませんように。
ビビっているのがバレて、かっこ悪いとか思われませんように――。
結論から言おう。
ものすごく満足した。
内容がどうとかじゃない。
莉子と繋がったということに、身も心も、全身が満足した。
これは俺にとっての朗報なのだが、莉子も初めてだった。
俺がどうしていいか分からずに、でも先生からのアドバイス通り焦らずに進めたのだが、難関が訪れた。入らない、という難関。
入らないというのは語弊があるが、お互いが初めての場合の助言はもらっていない。
痛がっていたので辞めようとしたら、莉子は辞めるのを嫌がった。
さらに痛がる莉子に申し訳なく思っていたら、終わった後に、「早く希一郎に慣れたい」と言ってくれたのが救いになった。
とまあ赤裸々な話をすると莉子が嫌がるのでここまでにしよう。
とにかく俺たちはお互いの初めてを捧げ合って、一つになった。
ちゃんとゴムは装着していた、ということだけは報告しておく。
そんなこんなで恋人街道まっしぐらの俺たちは、ピアス以外にもお揃いのものを増やしながら二人の時間を過ごしていくことになった。
相手を想うことと同じくらい、想われることの幸せも実感できた。
友だちから恋人に。恋人のフリから本当の恋人に。
口で言えば簡潔で完結的な間柄ではあるが、偽の恋人を演じてきた俺たちにとってその間柄というのは重要なのかもしれない。
恋人になったからには、関係性はもうきっと変わらない。
夫婦とか家族とかの上位互換はあったとしても、だ。
二人の距離はこれから先、縮まっていくだけだろう。
人目も憚らず俺は莉子に求愛するだけだ。
莉子は恥ずかしがって嫌がるだろうけどね。
~Fin~

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