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毒が出た。
昨晩緊急で流れたニュースは、この国に広く興味を、僕らの住む町には恐怖を流し込んだ。
学校に程近い東側の旧市街、地形的に少し窪んだ辺りで、特に濃い毒が検出されたという。
梅雨も終わり、宇宙服のような防護服を着た学者なのか業者なのかよく分からない大人達が毎日町中を巡り毒を測定するのもだいぶ見慣れていた。
そんな中僕たちは服装が夏服に変わり、瑞々しく空気を吸収する肌を広くさらす。
「タカギん家の庭らしいぞ」
「マジか……」
昨日のようなおかしな賑やかさの無い朝の教室。チャイムはまだ鳴らない。それでも登校した生徒達は自席に着席して、ひそひそと隣席と情報を共有している。
タカギの席は、空席だった。
宇宙遊泳の末、大人達はタカギの家の敷地で濃い毒を検出した。"某"の直後、TVで国の偉い人が言った「健康に直ちに影響はありません」と言った限りの数値を大幅に超える値だったらしい。
クラスメイトは教室の後方、ぽっかりと空いたタカギの席をチラチラと眺めながら、まるで残り毒を吸わないように呼吸を縮めていく。
昨日よりも、空席は増えていた。
始業五分前。
フタバが登校してきた。
「……」
歩調を弛めず自席まで着くと、何も知らないような素振りで着席を始めた。
今日も僕は、フタバを見つめている。
昨晩僕を杭打った同じ速度で椅子に座るフタバを、僕はぼうっと見つめている。
ぴちゃり。
フタバの首から上のどこかから滴る何かが、机上に水玉を作っていた。

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