ラスト・グッバイ

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 三十分ほど走らせたところで、耕平の車が高速を下りた。  横山くんを家の前でおろしたあと、下道を二十分ほど走って美穂を下ろす。 「ありがとう、三嶋くん。またゆっくりこっちに遊びにきて」 「ああ、またな」  美穂が車から降りると、耕平が後部座席の私を振り返った。 「結子の家までこっから二十分はあるよな。前に来る? しゃべりにくいし」  ふたりきりになった途端、耕平の私の呼び方が名字から名前になった。  きっと耕平は、何の意識もせずに呼んだんだろう。  付き合っていたときはあたりまえに名前で呼ばれていたのに、ひさしぶりだとやけにくすぐったく感じる。  私はもうカノジョじゃないのに。  地元にカノジョがいるくせに……。 「ほんと、そういうとこだよ……」  小さくつぶやくと、「ん?」と耕平が眉を寄せる。  聞き返すときのその表情も、全然変わってないな。  そう思っていると、耕平のスマホが震えた。

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